カマーリンスカヤって、どんな曲?
今回の演奏会の中で、見事に「団員の誰もやったことのない曲」が、グリンカの「幻想曲《カマーリンスカヤ》」です。この曲は、一度聞いただけでは、とりとめの無い、でもどこか鈍臭いロシアの匂いと、そうじゃないロシアの色が交錯している曲です。
練習が進むにつれ、団員の中から「この曲がどんな情景、どんなことを表しているのか知りたい」という声が上がって来ていましたが、先日指揮者の「この曲が表している事」についての一連の呟きが深夜に流れました。それをこの度まとめてみましたので、演奏する人、聞きに来る予定の人、そうでない人(つまり、皆ねw)の参考になれば…と思います。
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カマーリンスカヤ、は「カマールの」という意味の形容詞女性形。なぜ女性形かと言えば、たぶんそのあとに「プリャースカ(踊り)」という女性名詞が来るから。
カマーリンスカヤは、一曲を通して何かストーリーがあるわけではなくて、「ロシアの農村の民謡と踊り」そのままの形と、それを西洋風にアレンジした形との繰り返しでできている。
序奏→弦のユニゾン(ロシアの農村のおばちゃんたちの歌)→同じ旋律の木管(西欧風の和声を入れてみた)→その旋律に副旋律をつけてtutti みたいに。
1stVn単独の「カマーリンスカヤのテーマ」(45)→ そこからこんどはVaと2ndVnで西欧っぽく対位法的にしてみた(59) → ppのところでカマーリンスカヤ主題の踊り(たぶん既婚女性たちの)に太鼓が入ってくる(83)。
その純ロシア風の踊りと太鼓に、古典派風の高弦を入れてみる(89) → オーボエのお囃子が入る(96) → 弦のピッチカートは、放浪芸人の弾くロシアの民族楽器、グースリの音。(96) →再び古典派風の弦の副旋律を入れてみる(107) 。
ふたたび、結婚式を村に知らせるおばちゃんたちの歌(137) → また西欧風の和声を入れる(149) → もう一度カマーリンスカヤをクラリネット単独で開始(166) → 踊りに再び放浪芸人のグースリ(弦のピチカート)が入る(185) → フルートのお囃子(190)。
もちろん、放浪芸人のグースリの音が聞こえているところでは村の若い男たちがコサックダンス的なああいう感じの踊りを踊っていると思っていいでしょう。
リズムに合わせてみんなで新郎新婦に囃し立てている(196) → ふたたびカマーリンスカヤ。西欧風の和声でありながらも木管によるお囃子付き(208) → 再び単純なカマーリンスカヤの旋律と笛(オーボエ)に2ndVnとVaの副旋律合わせたバージョン(214) 。
ロシアの農村の踊りはテンポに起伏のある踊り。民謡の「カリンカ」みたいに。副旋律付きのテーマを遅くしてみる(220) → 再び速くする、おばちゃんたちが歌い続けるところに、ホルンがかけ声を入れる(232) → 再び遅くしてみる。手を下に伸ばしてゆっくりからかうように踊る(244)。
おばちゃんたちが三たび速く歌い出す。2ndVnとVaのピチカートは、小さな太鼓。フルートとオーボエはちょっとやさしいお囃子(250)。 → おばちゃんたちの歌う1stVnのテーマに、後ろの方からTrpで「婚礼の踊りだとよ!みんな集まれ」と声がかかる(256)。
その声をきいて、村のみんなが四方八方から集まり出す。駆け寄る村人たち。踊りの輪がどんどん広がっていく(274~)。→ 踊りが最高潮に達したところで、曲はおしまい。
主題の一部を使って「だるまさんがころんだ」みたいなやりとりが1stVnとほるんの間で交わされて、曲はおしまい。以上のように、幻想曲《カマーリンスカヤ》は、婚礼歌(11~)と、民謡舞曲(45~)のふたつの歌が、それぞれその生の姿と西欧風アレンジの形を交互に見せる形でできています。
そこで問題なのは「生の姿」なのですが、婚礼歌や民謡舞曲の合唱は、今日知られる西欧の宗教合唱曲のような荘厳なものではなく、農村の人たちが、「心を一にして歌う」というよりも「それぞれが囃す」ような、そういうふうにできているものです。
たとえが適切かわかりませんが、日本人の子供たちが、「かごめかごめ」を歌うとき、美しく合わせようなんて思いませんよね。それと同じです。それぞれがそれぞれの声で囃すのです。それが、幻想曲《カマーリンスカヤ》のユニゾンです。
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最後までお読みくださりありがとうございました。
ご褒美?に、よーつべから拾って来た動画をどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=dMOhbjD0vVk
いくつかありましたが、ロシアのおばちゃん達が陽気に踊っているのがいいな~と、思いました。まる!
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