音楽の風景
こんにちは。めまいと頭痛で午前中寝倒して、なんとか午後には復活できそうならん@びよら です。お腹空いた。
突然ですが、音楽の風景って考えた事ありますか?
簡単な所では、バレエの音楽(例えばプロコのロミオとジュリエット)なら「ここでは村人が楽しそうに踊っている、ロミオがジュリエットに愛の告白をしている、ベッドでごにょごにょ…♡、チャンバラシーンだなこれ、あ、ここでジュリエットが絶命した…あああ、死んじゃった((((((((っ;ω;)っ」みたいな具体的なシーンがあるので、想像は容易い事だと思います。
私が思うに、ロシアの音楽っていうのは、「一貫して物語がある」と思うのです。
では、今回の交響曲1番は?と思うと、これもかなりイマジネーションが浮かんで来る音楽だと思うのです。現に、3楽章はロメジュリに使われていますからね。
そんなことを考えながら、近いウチに「交響曲1番の風景」というものを書いてみようかなと。(注;結局、書けませんでした)
そして、それが自分が演奏するときの土台として脳内で思えれば成功なわけです。
もちろん、人によって解釈は様々でいいので、「あなたはこう書いたけど、私はこう思います」というのもいいと思います。それを考える事によって、自分がどのような音楽を演奏するのか?が見えてくると思われるので。
音を並べれば、音楽はできます。でも、それだけじゃつまらないでしょ?(苦笑)
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そんなことを書いて、ふと思い立って昔のSNSに書いた日記を探してみたら、2011年に参加した「5番なう」の時に、現指揮者のレイくんと一緒に作った物語がありました。せっかくなので、一気掲載します。(もういいよね?>レイくん)当時のセカンドトップは、こんなことを考えながら演奏していたという事です(苦笑)。>いちろーさん
※ただし、彼は3楽章はこの文とは違う解釈をしていました。気が向いたら直接聞いてみて下さい。残ってないかもだけど。
脳内に音楽を流しながら、お読みください。
♪チャイコフスキー交響曲第5番から連想されたエピソード。
1楽章(幕) 冬の情景
ロシア農村の冬、凍り付いた、冷気に低く響き渡る小屋の木のドアの音
ドアをあけると、地面に積もった雪が引きずられるような
見渡す限りの雪の平原には何もない。静寂があるのみ。
これから語られる叙事詩の、主人公たる男が冬のロシアの大地に立つ
毛皮の帽子をかぶり、猟銃を持った、天涯孤独の髭面の男を想像するがよい
「あぁ、わがロシアの大地よ!」とプーシキンは語ったように
その男は冬の真っ白な、どこまでも続く平原に向かって語りかけている姿を
厳しいロシアの冬、男は見た
遥か遠くの雪原を、すごいスピードでトロイカが駈けて行く風景を
ソリの鈴の音、馭者がムチを打つ音が響き渡る
しばらくして、馭者はむちをふるうのを止め
どこまでもひろがる雪の平原をゆっくりと進んで行く
ときおりでこぼこした雪面を突っ走ると、一段と大きく鈴が鳴る
そして、段々と姿が小さくなってやがて消えた
男は、トロイカが雪の丘をおりていくのを見送った
再び、雪の中を家路に向かった
ロシアの冬は厳しい、その厳しいロシアの冬の風景の中で
男はまず自分を思い、そしてロシアの大地を思う
その男が知る、ロシアの厳しく貧しく、しかし恵み豊かな大地が、
峻厳な姿ではあるが眼前に立ち現れることを
2楽章(幕) 春の芽生え
ロシアの大地がやさしく豊かな姿を垣間見せる、田舎の風景
寒いながらに、少しづつゆっくり、本当にゆっくりと暖かくなっていく
雪が解け、草が生えて草原が現れ
ゆっくりと太陽が顔を出して、植物が芽吹いていく
遠距離の郵便場所の角笛が響き、牧童の笛がきこえてくる
そんなロシアの春
遠い村からこの農村にやってきた男
彼の生活とは違う、やさしい農民の風景が男の眼下に広がっていた
素朴で無知だが、やさしいロシアの農民たちの春
牧童の角笛、スコモローヒ(ロシアの放浪芸人)の歌舞
そしてなにより、春の、豊かなロシアの大地。
時折小さな嵐がやってきて、大地を揺るがすが、
春の嵐はすぐに去っていき、再びロシアの田舎の風景が現れる
平穏で、何の変哲もない、一見退屈に見える
しかし、「彩りある田舎」の中で村では人々が動き出し
ようやく農作業に取りかかれる季節になる
風になった、男はこの田舎を高いところから眺めていた
男の視界の端には村が映る、遥か彼方から、ズームイン!
春が来た!と、農民たちが働き始めているのが見える
冬の風景と打って変わったこの活気は何だろう?
作物をつんだ荷車をロバにひかせて、たくさんの農民たちが立ち働く
その上を風になった男は飛んでいく
通り過ぎた後には、また何もない野原がひろがってる
動きのあまり見えないような
そんな農村地帯を、なめるようにゆっくり飛んでいき
いつしかその風景も幻のように消えて行った
そして、風になった男は遠くの町に再び現れた
3楽章(幕) サンクト・ペテルブルグの幻想
— もうすぐ開演だよ、席に座って、幕が上がるのを待とうか。
マキシムは、そういいながら劇場の座席に座って、ロビーで買って来たプログラムをぱらぱらとめくりながら、隣にいるターニャに話しかけ始めた。
次の演目は、ワルツで演奏されるんだね。
でも、伝統的なロシアに3拍子の踊りって、ないのね
つまり、「じゃぁ、この演目の舞台はどこ?マキシム」っていわれたら…
少なくともこれはロシアの田舎の風景ではあり得ないよね。
これはやっぱり、ペテルブルクだと思うんだよ。
ふぁそふぁそらそふぁみ れみれみふぁみれど… ってあるでしょ
これって、なんか、土着的なロシアのちょこまかしたイメージでありつつも
西ヨーロッパの、たとえばウィーンなんかのオペラの序曲に出てくる細かい旋律に似てるじゃない?
やっぱりこれ、ヨーロッパの真似してるロシアの都の風景だと思うのね
風景としては、宮廷で貴族たちの舞踏会が開かれる傍ら、ほら、ゴーゴリなんかにでてくる小役人がちょこまか働いているそういう風景を想像しても良いかも。鼻とかにでてくるああいう役人が滑稽に働き回ってるみたいな。
その最後に、1楽章の冒頭の旋律が出てくるよね
あ、そろそろ幕があがるね。おしゃべりはこの位にして…
そして…
それまでうつらうつらしていた、マキシムの隣に座っていた男が、目を醒し
ゆっくりと舞台を眺め始めた。
開幕
ここは、主人公の男の全く知らない世界。
主人公の男は、ちょっと場違いにも、劇場で舞台を見ている
男にとっては幻想的な世界。
ペテルブルクの宮廷で高級貴族たちが踊る
音楽を奏でるのは、皇帝がイタリアやウィーンから呼び寄せた楽士たち
目もくらむような、男には想像のつかないペテルブルクの宮殿。
優雅で洗練された雰囲気の中、小役人がちょこまか働いている。
あたかも、ゴーゴリの世界に出てくるような
でも、宮廷の舞踏会、都会の役人がいても… ここはやっぱりロシア
男にとっては初めて見る、目を見張るような世界。
しかし、その芝居は、まるで夢のように、幕を閉じる。
男はひとときの夢を堪能して、また眠りにつく
4楽章 英雄の凱旋
夏のロシア…例えて言えばモスクワの雀が丘のような、小高い丘の上
下を見渡すと川が流れ、夏の風が吹いている
段々大きな川になり、川べりの町の兵舎のファンファーレと
教会の鐘が聞こえてくる
しばらくすると、いつも通りの静かになった町
遥か昔、この町をナポレオンが侵攻してきたのを知っているだろうか
そして、それを追い払った、勇敢な名も無き将軍と軍人と民衆がいたことを
気がつくと、男は将軍となり馬上で指揮を取っていた
男が愛する、ロシアの大地は、今やフランスからきた軍隊がはびこっている、それを追い返して、もう一度、本当のロシアを取り返すために将軍は立ち上がる。
丘の上に陣取った将軍は、麓の町を見つめる。
川の畔にあるクレムリンに、ロシアの旗が翻った
そこに、将軍たる男は、全軍突撃を命じる。
最初、動いたのは、軍隊だけだったけれども徐々に民衆が動き始める
そしてフランス軍と激烈な戦闘の上、彼らを町から破竹の勢いで追い出していく。
馬上で将軍たる男は、兵士たちに向かって叫ぶ
「ロシアは、今またもう一度ロシアになるのだ!」と
激しい戦いは、もちろんたくさんの犠牲者を出すけれども
もう少しでロシアの勝利だ!
将軍は叫んだ…そして…
広場に人はいない、しかし、広場の奥から、凱旋の行進が進んでくる。
戦い終わった兵士たちが、将軍を戦闘に、モスクワに帰ってくる
その凱旋の行進はどんどん近づいてきて
道はしっかりとあけられているけれども
その横にはたくさんの民衆が
凱旋する将軍を迎えて歓呼の声を上げているのが見えるだろう
ついに凱旋の行進は宮殿の前にたどり着き
それを皇帝が迎え、主教が祝福する
将軍が皇帝に迎えられ、民衆のほうを振り返って歓呼に応える
1幕で厳しく雪の大地を見つめていた男は、城壁でたくさんの兵士と民衆に讃えられ…呟く
これぞロシアだ!
4幕からなる壮大な叙事詩は完結した
そしてPresto!
鳴り止まない拍手と中、ゆっくりと幕が下りていって劇が終わる。
そして、再びカーテンコールが始まり、舞台上では、皇帝役が、民衆や兵士の担ぐ玉座の上で、客席の方を向いて歓呼に応えてお辞儀している
みなさま、お楽しみいただけましたでしょうか?
4幕からなるお芝居、楽しんで頂けましたら幸いにございます。
鳴り止まない拍手が、その道化師の声をかき消していた。
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